傷病手当金と有給休暇はどちらが得か
社会保険に加入するとさまざまなメリットがあり、そのなかの一つに傷病手当金があります。傷病手当金は業務外のケガや病気で会社を休み、給料をもらえないときに支給されます。
傷病手当金を申請するかしないかは本人次第です。傷病手当金を申請せずに有給休暇を消化することもできます。有給休暇は休んだ日の給料が満額支給されますが、傷病手当金は満額支給されません。
傷病手当金を受給するより有給休暇を使ったほうが必ず収入が多くなるのでしょうか?
傷病手当金を受給するより有給休暇を使ったほうが必ず収入が多くなるとは限りません。残業の多い人は傷病手当金を受給したほうが得になるときがあります。今回はなぜそうなるのか解説したいと思います。
傷病手当金の額
傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。標準報酬月額は毎月の給料の総支給額程度と考えてください。
有給休暇取得時の賃金
有給休暇取得時の賃金として一般的なものは、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」です。つまり残業代以外の賃金が支払われます。月給の場合は、欠勤控除がないということになります。
傷病手当金は非課税
課税所得が195万円までの人は、給料の15%程度は所得税や住民税がとられます。課税所得が多ければ多いほど税率は高くなります。高収入の人ほど、傷病手当金をもらったほうが得になります。
具体例
例1(残業のない人)
Aさんの標準報酬月額が24万円(基本給:24万円)とします。休業した月の所定労働日数は20日でした。
Aさんが休業した月の所定労働日に有給休暇を消化したとき
→休業月の給料は240,000円・・・・・(a)
Aさんが27日間の傷病手当金を受給し、待機期間の3日間を有給消化したとき。
→その月の給料は日割り計算で 24万円×3/20日=36,000円
→傷病手当金は24万円/30×2/3×27日=144,000円
→合計:180,000円・・・・・(b)
(a)-(b)=6万円となりますが、税金を考慮するとその差は縮まります。税金を15%とすると(a)-(b)=3万円程度となります。
つまり手取り額で考えると3万円の差になります。
例2(残業の多い人)
Aさんの標準報酬月額が24万円(基本給:18万円、時間外手当:6万円)とします。休業した月の所定労働日数は20日でした。
Aさんが休業した月の所定労働日に有給休暇を消化したとき
→その月の給料は180,000円・・・・・(a)
(休業中に時間外手当は発生しないため、基本給分しか支給されません)
Aさんが27日間の傷病手当金を受給し、待機期間の3日間を有給消化したとき。
→その月の給料は日割り計算で 18万円×3/20日=27,000円
→傷病手当金は24万円/30×2/3×27日=144,000円
→合計:171,000円・・・・(b)
(a)-(b)=9,000円となり、税金を15%とするとその差は-14,000円です。
残業の多い人は傷病手当金を受給したほうが14,000円お得になりました。
結論
- 残業をまったくしない人は有給休暇を使ったほうが有利
- 残業の多い人は傷病手当金を受給したほうが有利になる場合がある。
- 有給休暇を消化したくない人は迷わず傷病手当金を受給すべし。
- 出勤率が8割に満たない場合は次期の有給休暇が付与されない恐れがあるので、出勤日数の足りない人は有給休暇を使うべし。