今日は暇だから帰っていいよと言われたら

サービス業などでバイトをして、お客が少なく暇なとき、社長や店長から今日は暇だから早めに帰っていいよと言われたことはありませんか?
このとき、
「ラッキー、早く帰れたので遊びに行こう」と思う反面
「せっかく仕事しにきたのに給料が少なくなるのはいやだなあ」
と感じると思います。
月給であれば給料の減額はないでしょうが、時給の場合、早く帰った分の給料は支給されないことが多いと思います。
社長も暇な時間の給料を払いたくないので早く帰らせようとするでしょう。
帰りたいのに給料が下がるのが嫌な人はどうすればいいのでしょうか?
「帰らない」という意思表示をして、それでも「帰れ」と命令されたときに帰るのがベストです。
会社が従業員を早退させるときは会社都合の休業となるため、休業した時間について会社は賃金の6割を支払わなければなりません。
会社都合で帰った時は休業手当を請求できるのです。
※ 法令は2026年6月時点の情報に更新しています。特に賃金請求権の消滅時効が2020年4月の労働基準法改正で2年→当分の間3年(将来5年)に延長された点に注意してください。
もくじ
自由意思の早退と会社都合の早退の違い
「早く帰っていいよ」と言われたら、「帰ってもいいし、帰らなくてもいい」という受け取り方ができます。そのまま帰ったらその従業員の自由意思の早退と受け取られます。
つまり使用者の責めに帰すべき事由の早退ではなく、自己都合の早退となってしまいます。
自己都合の早退では当然休業手当をもらえません。
休業手当を確保するには、「私は帰りません(働かせてください)」と意思表示し、それでも「帰れ」と命令される状況を作ることが重要です。
会社都合の休業とは(労基法26条)
労働基準法第26条は次のように定めています。「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」
使用者の責に帰すべき事由による休業とは、「使用者の故意・過失による休業はもとより、経営・管理上の障害による休業を含み、天災地変、もしくはこれに準ずる程度の不可抗力による休業以外のものは、使用者の責に帰すべき休業に該当する」とされています。
「今日は暇だから」という理由で早退させる場合、経営・管理上の障害による休業にあたるため、会社都合の休業に該当し、休業手当を請求できます。
天災地変による休業について
台風の接近や大雪のため交通機関がストップしてしまい、会社が臨時休業になったとします。休業した労働者はその日の賃金を会社に請求できるのでしょうか?
労働基準法上は、休業の理由が天災地変の場合は、使用者の責めに帰すべき事由による休業には当たりません。したがって労基法26条による休業手当の請求はできません。
ただし、その臨時休業日について賃金を支払う(欠勤控除しない)会社が多いようです。または、有給休暇の消化という形もあるかもしれません。
天災による休業日に賃金を支払うことをルール化している会社、または慣行的に賃金を支払っている会社には、当然賃金を請求できます。
大雪や台風で会社は休業せずに、半数の労働者が出勤、半数の労働者が欠勤した場合はどうでしょうか?
出勤した労働者と、欠勤した労働者の公平性を考えると、欠勤した労働者について有給休暇の消化として処理することが望ましいと考えます。
なお、コロナ禍(2020〜2022年)のような感染症蔓延に伴う自宅待機命令は、状況により会社都合の休業に該当するケースがあります。多くの会社が雇用調整助成金(雇調金)を活用して休業手当を支給していました。新型感染症が再流行した場合も、自宅待機命令が出れば原則として休業手当の対象になります。
早退命令を「会社都合休業」にする手順
暇だから帰っていいよと言われたが給料ももらいたいときの手順をまとめます。
- 会社都合の休業にできないか考える
- 「帰りません(働かせてください)」と意思表示をする
- それでも帰るよう命令された場合は、会社都合の休業にしてもらう(できれば文書または電子メール、LINE等で命令の証拠を残す)
- 休業手当を請求する
ただし、目先の利益のためにこのようなことをすると、評価に影響したり、会社との関係が悪化する可能性があります。よほど悪質な会社か、すでに退職を決めている場面でなければ、その場で請求するのは現実的ではありません。
未払い賃金として後から請求する
その場で揉めたくない場合は、早退を命令された事実をメモ・LINE・メール・タイムカード・シフト表の写真などで記録に残しておき、退職後に未払い賃金として請求するのが現実的です。
未払い賃金(休業手当を含む)の請求権の消滅時効は、2020年4月施行の労働基準法改正で大幅に延長されました。
- 2020年3月31日以前に発生した賃金:2年(旧法)
- 2020年4月1日以降に発生した賃金:当分の間3年(将来的に5年へ延長予定。経過措置)
つまり、2020年4月以降に「暇だから帰っていいよ」と言われて泣き寝入りした分があれば、退職後3年以内であれば請求できる可能性があります。
請求方法には次のような選択肢があります。
- 労働基準監督署(労基署)に申告・相談する
- 労働審判を申し立てる(迅速・低コスト)
- 少額訴訟(60万円以下)を起こす
- 弁護士・社労士に依頼する
- 各都道府県労働委員会のあっせん制度を利用する
金額が小さくても、未払い分があるという事実を会社に認識させるだけでも価値があります。
まとめ
「今日は暇だから帰っていいよ」と言われたときは、自由意思で帰ると自己都合早退として休業手当がもらえません。しかし、「帰りません」と意思表示し「帰れ」と命令される形を作れば、労基法26条の会社都合休業として平均賃金の60%以上の休業手当を請求できます。
その場で揉めたくなければ、メモや証拠を残しておき、退職後に未払い賃金として請求しましょう。賃金請求権の消滅時効は2020年4月以降に発生した分について当分の間3年(将来5年)に延長されているので、過去の泣き寝入り分も諦めずに振り返ってみる価値があります。