失業した時、雇用保険求職者給付(失業保険)を増やす裏ワザ

会社を辞めて失業したとき、ハローワークで手続きをすれば雇用保険の求職者給付(以下、失業保険の給付金)が支給されます。
働かなくてもお金をもらえるってすてきですよね。
せっかくもらえるのだから、なるべく多くもらいたいというのが人間の心理です。
お金が多く手に入れば精神的に余裕ができるため、求職活動にもいい影響を与えます。
どうやって失業保険の給付金を増やすのでしょうか?
今回は失業保険の給付金を増やす方法について記載したいと思います。
※ 法令・制度は2026年6月時点の情報に更新しています。賃金日額の上限額・下限額は毎年8月に改定されます。
もくじ
- 失業保険の給付金を増やす方法
- 失業保険の給付金を受給する手続き
- 賃金日額の計算方法(原則と特例)
- 具体例:欠勤+残業で賃金日額がどう変わるか
- 賃金日額の上限額・下限額
- 給付制限期間と教育訓練給付の活用
- 実行するうえでの注意点
- まとめ
失業保険の給付金を増やす方法
失業保険の基本手当を増やす方法は、原理としては次の2点に集約されます。
①残業して離職前6か月間の賃金を増やす。
②欠勤や有休消化で、離職前6か月間の労働日数を抑える。
失業前に残業して給料を上乗せすると失業保険の給付金が増えるという理屈は誰でもわかるでしょう。
しかし、労働日数を減らすと失業保険の給付金が増えるってどういうことでしょうか? ここには「賃金日額の特例計算」が関係しています。
失業保険の給付金を受給する手続き
まず、失業したら、離職票をもって最寄りのハローワークで求職の申し込みをします。
すると28日間隔で失業認定日が設定されます。
失業認定日に求職活動の報告をすると、失業保険の給付金である基本手当が指定の口座に振り込まれます。
基本手当は賃金日額の50~80%です(年齢区分と賃金日額により率は異なります)。
賃金日額の計算方法(原則と特例)
賃金日額の原則的な計算
賃金日額の原則的な計算方法は以下の通りです。
賃金日額=離職前6か月の賃金総額/180
賃金日額の計算方法の特例(最低保証額)
欠勤控除があると、「日給、時間給、出来高払い等の場合の賃金日額の最低保証額」が適用されます。
「最低保証額」の計算方法は以下の通り。
賃金日額=離職前6ヶ月間に支払われた賃金総額÷離職前6ヶ月間に労働した日数 × 70%
最終的な賃金日額は原則的な計算方法と、特例の計算方法を比較して多いほうが適用されます。
賃金日額の計算方法の特例をうまく活用することにより、賃金日額を増やすことができるのです。
具体的には、残業をしながら欠勤や有給休暇消化で労働日数を抑えるという組み合わせになります。
具体例:欠勤+残業で賃金日額がどう変わるか
下記の①、②、③の事例を比較してみましょう。
例①・・・欠勤も残業もないとき
Aさんの月給は21万円、毎月の所定労働日数は21日とします。
Aさんの賃金日額は原則的な計算となり、
賃金日額=21万円×6か月/180=7,000円
例②・・・欠勤がなく、残業があるとき
Aさんの月給は21万円、毎月の所定労働日数は21日とします。
Aさんが毎月5万円分の残業をしたとき
Aさんの賃金日額は原則的な計算となり、
賃金日額=26万円×6か月/180=8,667円
例③・・・欠勤があり、残業があるとき
Aさんの月給は21万円、毎月の所定労働日数は21日とします。
Aさんが毎月10日間欠勤し、1日あたり1万円(合計10万円)が欠勤控除されました。
Aさんは欠勤した分を残業でカバーし、毎月5万円分残業しました。
Aさんは欠勤控除があったので「最低保証額」の計算方法が適用されます。
賃金日額=16万円×6か月/66日×70%=10,182円
結果
例③の欠勤、残業ありの条件がもっとも給付額が多くなりました。
欠勤により1ヶ月あたりの労働日数を少なくし、残業をしたことにより、賃金日額が多くなったのです。
賃金日額の上限額・下限額
賃金日額には年齢区分別の上限額・下限額があり、無制限に増やせるわけではありません。上限額・下限額は毎年8月に改定されます(参考:2025年8月改定値)。
| 年齢区分 | 賃金日額の上限額(参考) |
|---|---|
| 29歳以下 | 約14,130円 |
| 30〜44歳 | 約15,690円 |
| 45〜59歳 | 約17,270円 |
| 60〜64歳 | 約16,490円 |
| 全年齢共通 | 下限額:約2,869円 |
上記はあくまで参考値です。実際の上限額・下限額は厚生労働省・ハローワークの最新公表値を確認してください。
つまり、月給が60万円・80万円といった高所得者の場合、いくら残業を増やしても上限額で頭打ちになります。年収中位以下の方ほど「欠勤+残業」の特例計算の効果が大きく出ます。
給付制限期間と教育訓練給付の活用
自己都合退職の場合、過去には基本手当の支給開始まで3か月の給付制限期間がありました。しかし制度改正により段階的に短縮・緩和されています。
- 2020年10月から:自己都合退職の給付制限期間が3か月→2か月に短縮(5年間に2回まで適用)
- 2025年4月から:自己都合退職でも、離職前1年以内または受給資格決定後に教育訓練(自発的な能力開発)を受講した場合は、給付制限なしで即支給となる制度に改正
離職前から教育訓練給付(一般教育訓練給付・特定一般教育訓練給付・専門実践教育訓練給付)を受けておくと、給付制限を解除できる可能性に加え、受講費用の20〜70%が補助されます。これは「裏ワザ」ではなく正規の制度なので、まずこちらを活用するのが王道です。
実行するうえでの注意点
- 離職前6か月間の収入が少なくなる(手取り収入は減る)
- 1か月あたり11日以上出勤しないと、その月は被保険者期間としてカウントされません
- 時間外労働の上限規制(2019年4月/中小企業は2020年4月施行)により、原則として月45時間・年360時間、特別条項適用時でも月100時間未満・複数月平均80時間以内に抑える必要があります。残業時間を意図的に増やす作戦には法律上の上限があります
- 欠勤や有休消化を会社の業務に支障が出るほど頻繁に行うと、就業規則違反となる可能性があります
- 無断欠勤は懲戒事由です。重責解雇となれば離職理由が「重大な責に帰すべき理由」となり、基本手当の給付制限が大幅に悪化します
- 会社や同僚に迷惑がかかります
- 雇用保険被保険者の種別が、パートタイマー(労働時間が週に30時間未満)の人は「日給、時間給、出来高払い等の場合の賃金日額の最低保証額」の特例が適用されませんので、欠勤しても賃金日額は増えません
本記事は雇用保険法の計算特例の仕組みを解説したものです。意図的に欠勤・残業を組み合わせる行為は、会社・同僚への影響や法令上の上限規制、就業規則違反のリスクがあるため、実践は推奨しません。あくまで知識として理解しておくとよいでしょう。
まとめ
失業保険の基本手当を増やす王道は、退職前から計画的に動くことです。具体的には次の3点を意識しましょう。
- 残業を含めた離職前6か月の賃金をなるべく多く確保する(ただし時間外労働の上限規制の範囲内で)
- 退職時期と雇用保険被保険者期間を逆算して、給付日数が増える区切りで退職する
- 教育訓練給付を活用して、自己都合退職の給付制限を解除し、即支給を狙う
賃金日額の特例計算(欠勤+残業)は理屈としては成立しますが、会社・同僚への影響や懲戒リスクを考えると割に合わない場面が多いです。育児休業給付や高年齢雇用継続給付にも同じ賃金日額計算の考え方が使われているので、制度の仕組みを理解しておくことは無駄になりません。